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この記事の要点

  • Sunoは2026年8月13日、ブラウザDAW「Suno Studio 2.0」をPremier向けに公開した。MIDIの録音・編集・インポート、ウェーブテーブルシンセ、チャット協働、高度なステム分離、オートメーションなどを追加。
  • MIDIクリップを音声生成のプロンプトとして使える点が特徴で、テキスト入力だけでなく演奏入力から生成へつなぐ設計になっている。
  • Studio経由の32bit/48kHzマルチトラック・ステムのエクスポートにはダウンロード上限がない一方、通常のSuno曲は9月3日からプラン別の月次ダウンロード制限が適用される。

海外事例:Suno Studio 2.0がDAW機能を拡張

Sunoは2026年8月13日、ブラウザ上で動作する生成DAW「Suno Studio 2.0」を公開しました。対象はPremierプラン加入者です。Suno Studioは2025年9月にベータ公開された制作スイートで、今回の更新はアーティストからのフィードバックを反映した大規模アップデートと位置づけられています。

追加機能の中心はMIDIです。タイムライン上でMIDIのインポート、録音、編集が可能になり、新しいウェーブテーブルシンセで音色設計も行えます。MIDIコントローラーがなくてもタイピングキーボードで演奏でき、アーペジエーターやコードモードも用意されています。Sunoは、MIDIクリップを音声生成のプロンプトとして使える点をStudio独自の機能として強調しています。

チャットバー(ベータ)では、Studio内で会話しながら楽器やボーカルを生成したり、カスタムプラグインやシンセプリセットを設計したりできます。Sunoは、チャットが音楽制作の文脈を理解し、「バンドの一員のように」話しかけられると説明しています。起動時点では新規プラグイン作成にクレジットは不要ですが、将来的にクレジット制が導入される可能性があるとしています。

その他の更新には、高度なステム分離、サイドチェインコンプやコンボリューションリバーブなどのオーディオエフェクト、パラメータのオートメーション曲線が含まれます。Suno外の音源を取り込んでステムに分割し、Studio上で再編集する使い方も想定されています。

AIエンタメとして注目したい点

Studio 2.0の意味は、AI音楽の体験が「プロンプトを打って曲を出す」段階から、「DAWの中で生成と編集を往復する」段階へ進んでいることです。Sunoは制作の原則として、リアルタイムでノブを回して耳で確認できること、MIDIキーボードやマイクなど触覚的な入力の重要性、思考の速度に合わせた生成速度の必要性を挙げています。

これは、AI音楽をエンタメ制作の下書きや仕上げ工程に組み込む流れと一致します。テキストだけで曲を丸ごと生成する使い方は残りつつ、生成結果をMIDIやステム単位で分解し、人間の判断を挟みながら仕上げるワークフローが前面に出ています。AI音楽の議論が「完全自動生成か否か」から「どの工程で人間が介入するか」へ移る中で、Studio 2.0は後者を製品設計で示した例です。

同じ週の文脈も重要です。Sunoは8月12日にBMGとのグローバル提携を発表し、業界と共同開発する新音楽モデルの公開を予告しています。8月10日には9月3日からのダウンロード制限と利用規約更新も説明しました。Studio 2.0は制作面の進化、BMG提携は権利面の進化、ダウンロード制限は流通面の抑制という三つの動きが並行しています。

ダウンロード制限との二層構造

9月3日から適用されるダウンロード制限は、無料ユーザーが生涯7回、Proが月20回、Premierが月60回という上限です。既存ライブラリの曲にも遡及適用されますが、Suno上での再生と共有は全プランで制限されません。

一方、Premier加入者がSuno Studioを使う場合、32bit/48kHzのマルチトラックやステムのエクスポートにはダウンロード上限がないとSunoは説明しています。通常の生成曲ダウンロードに上限を設けつつ、Studioという制作導線では制限を外す設計は、大量エクスポートによる配信サービスへの流し込みを抑えつつ、本格的な制作ワークフローは維持する意図が読み取れます。

Sunoは、ダウンロード制限が悪意ある大量配信を難しくするための措置だと述べています。8月6日に示した音声透かしやフィンガープリント、コミュニティガイドラインの更新と合わせると、制作の自由度と外部流通の制御を別レイヤーで設計していることがわかります。

日本との比較

日本では、日本語特化のAI音楽生成サービス「otojam」が2026年6月のベータ公開以降、歌詞やイメージを日本語で入力して楽曲を作るWeb体験を提供しています。一方、Suno Studio 2.0は英語圏発の制作スイートで、DAWに近い編集機能とAI生成の融合を狙っています。日本のクリエイターにとって、otojamは手軽な日本語生成、Suno Studioはより本格的な編集とステム操作という棲み分けになり得ます。

流通面では、Spotify Japanが9月中旬からAI Personaバッジの表示を始める予定で、AI生成のアーティスト人格と推薦の関係が整理されつつあります。Sunoのダウンロード制限は、日本のクリエイターが生成曲をSpotifyなどへ持ち出すハードルも上がることを意味します。Studio経由の無制限エクスポートはPremier限定のため、日本の個人クリエイターがどのプランで制作から配信までを回すかが実務上の論点になります。

国内のAI音楽プロジェクトでは、スポルアップの「フレーメン」がSUNOプロンプト辞典「prompt-jukebox」を使い、物語連載と楽曲配信を接続しています。プロンプト設計とIP運営に注力する国内事例と、DAW統合を進めるSuno Studioは、AI音楽をエンタメに組み込む別のアプローチを示しています。今後、日本のクリエイターがStudio 2.0相当の編集機能を求めるか、プロンプト設計と物語運営を重視するかで、使い分けが進む可能性があります。

クリエイターが見るべき論点

プロデューサーにとっては、MIDIを生成プロンプトに使える点が試す価値のある変化です。既存のDAWで録ったパートを参考にAI生成を重ねる、あるいは生成結果をステム単位で再編集する流れが、ブラウザ上で一通り完結します。ただしPremier限定であり、日本から利用する場合は言語やUI、プラン料金のハードルもあります。

配信を考えるクリエイターにとっては、9月3日のダウンロード制限と商用利用の条件が先に確認すべき論点です。Sunoは有料プランでダウンロードした曲の商用利用権があると説明していますが、無料の試用ダウンロードは個人利用のみです。Believe傘下のTuneCoreは2026年4月から、正式ライセンスのないAI音楽制作プラットフォームで作られた楽曲の配信をブロックする方針を導入しており、日本のインディーアーティストは利用先プラットフォームとディストリビューターの両方のルールを確認する必要があります。

ファンにとっては、AI音楽の制作過程が「誰が・どの工程で・どのツールを使ったか」で見え方が変わる時代が進んでいる点が重要です。Studio 2.0は完全自動生成ではなく、人間の演奏入力や編集判断を挟む制作体験を前面に出しています。今後の新音楽モデル公開とBMG提携の内容次第で、レーベル公認の素材を使ったStudio体験がどう広がるかも注目です。

出典